ウェストミンスターからホワイトホール(Whitehall)を通り、途中グレート・スコットランド・ヤード(Great Scotland Yard)のハリー・ポッターの撮影スポットに立ち寄って、トラファルガー広場まで歩きました。ビッグ・ベンと国会議事堂の荘厳な姿を眺めながら政治の中心地を抜け、映画のワンシーンを思い出しつつ広場に至ります。距離はほどよく、気軽に歩けるルートです。
ウェストミンスター(Westminster)
最寄り駅はウェストミンスター駅(Westminster Station)。
駅を出ると目の前にエリザベス塔(the Elizabeth Tower、通称ビッグ・ベン)が迫力ある姿で現れます。

ビッグ・ベン(Big Ben)はエリザベス塔内部の大鐘を指し、塔はウェストミンスター宮殿(Palace of Westminster)の一部で、ユネスコ世界遺産に登録されています。宮殿は英国の国会議事堂(Houses of Parliament)として使われ、英国議会(上院と下院)が置かれるロンドンの政治の中心です。
塔の内部には5つの鐘があり、ビッグ・ベン(正式にはグレート・ベル)は最大の鐘で、重量は約13.7トンです。毎時「E」の音を鳴らし、訪問のタイミングによっては特徴的な時報の音色を聞くことができます。
ウェストミンスター寺院(Westminster Abbey)は宮殿のすぐ北西、St Margaret Streetを挟んで隣接しています。1066年のウィリアム征服王の戴冠以来、王室の儀式の舞台であり、2023年のチャールズ3世の戴冠式もここで行われました。
ゴシック建築の外観は荘厳で、内部にはエリザベス1世、ジェフリー・チョーサー、チャールズ・ディケンズ、ルディアード・キップリング、ジョージ・フレデリック・ヘンデル、アイザック・ニュートン、チャールズ・ダーウィン、スティーヴン・ホーキングなどが埋葬されています。ウィリアム・シェイクスピア、ウィリアム・ブレイク、ロバート・バーンズは詩人コーナーに記念碑があります。
寺院の内部がとても美しいので、時間があれば見学をおすすめします。

パーラメント・ストリート(Parliament Street)へ
ここから「Parliament Street(パーラメント・ストリート)」に入ります。
Parliament Square(パーラメント・スクエア)に立つウィンストン・チャーチル像を正面に見て、右手の通りを入ります。この通りは英国政府の中枢で、歴史的な建造物が並んでいます。歩道は広く、観光客や地元の人で賑わっています。(ちなみにパーラメント・スクエアは、国内初の公式のラウンドアバウトだそうです)

「Parliament Street」をしばらく進むと、最初の信号で左に入る道「King Charles Street」があり、立派なゲートも見えます。その道を進むと「チャーチル戦時執務室(Churchill War Rooms)」があります。第二次世界大戦中のウィンストン・チャーチルの地下壕として知られています。
さらに「Parliament Street」を進むと道路の中央にセノタフ(Cenotaph)が見えます。これは第一次世界大戦と第二次世界大戦の戦没者を追悼する国立記念碑です。毎年11月11日のリメンブランス・デイには、ここで追悼式が行われます。このあたりから道の名前が「Whitehall(ホワイトホール)」に変わります。

ダウニング街10番地(10 Downing Street)
セノタフを少し過ぎると、左手に人々が集まり写真を撮っている様子が見えるかと思います。そこは「ダウニング街10番地(10 Downing Street)」で、ニュースでも頻繁に登場する場所です。1735年以来、英国首相官邸として使用されており、黒い門と警備員が特徴です。セキュリティ上、門は常に閉じられています。

バンケティング・ハウス(Banqueting House)
次の信号の手前、右手に見える建物が「バンケティング・ハウス(Banqueting House)」です。ホワイトホール宮殿のうち、唯一現存する主要な建物で、ジェームズ1世のためにイニゴ・ジョーンズが設計、1622年に完成しました。1649年1月30日、寒空の下でチャールズ1世がこの建物の2階の窓から足場に出て、公開処刑された歴史的な場所でもあります。
ホワイトホール側から見ると通り過ぎてしまうような外観ですが、主室には1636年に設置された9枚の天井画があり、金箔の彫刻で装飾されています。これらの天井画は、ジェームズ1世(チャールズ1世の父)の治世とステュアート朝を称えています。レンガ造りの地下室(Undercroft)は岩や貝殻で装飾され、ジェームズ1世が私的に酒を楽しむための空間として使用したとのこと。
「バンケティング・ハウス」は、2025年10月まで閉館の予定です。
ホースガーズ・パレード(Horse Guards Parade)
その向かい側にあるのがホースガーズ・パレード(Horse Guards Parade)です。
ここには王室騎兵(Household Cavalry)が常駐し、騎馬による警護を担当しています。彼らはバッキンガム宮殿前の赤い制服を着た徒歩衛兵(近衛歩兵連隊)とは別の部隊です。ホースガーズのアーチの下には2人の騎馬衛兵が立って(または馬上で)待機しており、多くの観光客が写真撮影をしていることが多いです。

ホースガーズ・パレードは16世紀、ホワイトホール宮殿のトーナメント場として使用された広場で、現在は王室行事や軍事式典の会場です。平日午前11時には騎馬衛兵の交代式(Changing The King’s Life Guard)が行われ、観光客は無料で観覧できます。6月には国王の公式誕生日を祝うトゥルーピング・ザ・カラーとビーティング・リトリートが開催され、ビーティング・リトリートの収益は軍関連の慈善団体に寄付されます。
ホースガーズ・パレードの時計の「2」の黒い背景はチャールズ1世の処刑を記念する伝説に関係していると言われています。
グレート・スコットランド・ヤード(Great Scotland Yard)
通りを進むと、右手に「グレート・スコットランド・ヤード(Great Scotland Yard)」が見えてきます。名前の由来は、スコットランド国王とその廷臣たちがこの地に滞在したという言い伝えにあると考えられています。1829年にこの地域にロンドン警視庁が設立され、警察は「スコットランドヤード(Scotland Yard)」として知られるようになりました。ロンドン警視庁は19世紀後半に移転し、現在の本部は「ニュー・スコットランド・ヤード(New Scotland Yard)」と呼ばれています。

この通りは映画「ハリー・ポッター」シリーズで魔法省への入り口として登場します。赤い電話ボックスは映画の中だけの設定ですが、映画ファンにとって特別な意味を持つスポットです。映画「ドクター・ストレンジ」でもこの通りが登場するシーンがあります。

トラファルガー広場(Trafalgar Square)
グレート・スコットランド・ヤードに近づくころには、トラファルガー広場の「ネルソン記念柱」が見えてくると思います。

この記念柱は、広場の名称とともに、1805年10月21日のトラファルガーの海戦においてイギリス海軍がフランス・スペイン連合艦隊に勝利したことを記念して建てられたものです。記念柱の建設が決定されたのは、海戦から約38年後の1840年代でした。記念柱の高さは約56メートル(185フィート)で、どの角度から見ても迫力があります。


トラファルガー広場は、ほぼいつでも国内外の観光客で賑わっています。音楽やジャグリングなどのストリートパフォーマンスが頻繁に行われており、一休みしたり、時間を過ごしたりするのに最適なスポットです。
広場では、時期によっては政治演説やデモが行われることがあります。また、かつては大晦日のカウントダウンイベントが開催されテレビ中継されることもありました。この新年イベントでは、ロンドン市民や観光客が集まり、「ほたるの光」(Auld Lang Syne)を合唱する光景が印象的です。(イギリスでは、「ほたるの光」は卒業シーズンではなく、大晦日の定番曲として親しまれています。)
夏には、広場の中央にある2つの噴水が涼しくリラックスできるスポットとなり、大人から子供まで水に足を入れて楽しんでいます。
トラファルガー広場の南東の角には「ロンドンで最も小さい警察署」と呼ばれる小さな建物があります。これは1926年、広場でのデモや集会を監視するために設置されたもので、内部にはスコットランドヤード(ロンドン警視庁)に連絡する電話と、付近の警察官に通報するためのビーコンが備えられていたそうです。現在は警察業務には使用されておらず観光名所として知られています。


広場の北側には「ナショナル・ギャラリー(National Gallery)」があります。広場と美術館の間は歩行者専用になっており、広場から直接アクセスできます。国の公立美術品コレクションを収容するために建てられたこの美術館は、現在ではルーヴル美術館、プラド美術館、ウフィツィ美術館と並んで世界有数の美術コレクションの一つに数えられています。
「ナショナル・ギャラリー」の裏には「ナショナル・ポートレート・ギャラリー(National Portrait Gallery)」もあります。

おわりに
トラファルガー広場から北へ伸びる大通り「チャリング・クロス・ロード(Charing Cross Road)」は、かつて古書店街として有名でした。映画「84 Charing Cross Road」(出演:アン・バンクロフト、アンソニー・ホプキンス)の舞台となった実在の古書店「Marks & Co.」(84 Charing Cross Roadに所在)は、現在は別の商業施設に変わっています。
トラファルガー広場の最寄駅:
チャリング・クロス(Charing Cross、地下鉄および国立鉄道、徒歩約2~3分)
レスタースクエア(Leicester Square、徒歩約5分)
ピカデリーサーカス(Piccadilly Circus、徒歩約7分)